時代劇ライフ2015年12月
本当に一年はあっという間で、気がつけばもう年の瀬である。
例年以上に時代劇視聴量が増え、データ採りもはかどった2015年だった(その割にはホームページに反映されていないが)。今月の時代劇ライフをちょっと振り返ってみる。
BSジャパンの『大江戸捜査網』は松方弘樹版が終了し、嬉しいことに『新大江戸捜査網』へと突入してくれた。このまま平成・橋爪淳版まで放送してくれるようで、早まってDVD−BOXを買わなかったのは正解だったようだ。
テーマ曲もナレーターも代わり、あの隠密同心の名乗りもなくなってもはや見る影もない大江戸捜査網だが、長年お目にかかりたかった作品だけに感激ひとしお。瑳川哲朗が井坂のダンナから日向主水正なり隠密支配になってしまったのは栄転にみえて実は左遷だよなァとか、何で佳那晃子はラス立ちに参加しないんだチクショーとか突っ込みながら、案外楽しく観ている。
BS11は夜7時に『斬り捨て御免!』を放送するかたわら、午前3時に再放送枠を設けここでは尾上菊五郎の『半七捕物帳』が。歌舞伎座テレビの制作なのだが珍しく松竹京都ではない東京撮りだ。中村プロ以外の作品では目にしたことのない「撮影:淵野透益」のクレジットを見て驚いた。
スカパー!の時代劇専門チャンネルでは、また初回から始まった『素浪人花山大吉』を前回放送の穴埋めというかたちでコツコツ録画。これを観ながらおからを肴に酒を飲むと実に旨い。『柳生新陰流』『遠山の金さん捕物帳』『暴れん坊将軍?』も録画保存課題になっている。
12月はミフネ月間にしようという目標から、日本映画専門チャンネルを解約し、代わってチャンネル銀河を契約。というのは松本清張原作の2時間ドラマ(火曜サスペンス劇場)特集の一環で、三船プロ制作のものが混じっていたからだ。
これは別に時代劇に関係ないが、もはや三船敏郎云々より三船プロフリークになりつつあるアチシにとっては興味を抑えることができないものだった。
火サス第一作でミフネ社長自らも出演している『球形の荒野』、林隆三が自らを陥れた連中を単身追うタクシー運ちゃんを演じた『交通事故死亡1名』、一般人が独自に犯人に迫るという点ではこれと共通した関根恵子の復讐ドラマ『10万分の1の偶然』という三作。撮影・有吉英敏や美術・安部衛など時代劇でもお馴染みの名前をクレジットに見つけてはウハウハした。このへんは一応ホームページのほうにも反映できて、勝手に達成感を抱いたりしている。
また、ラインナップが既視感アリアリのものばかりになってきて解約していた東映チャンネルも『警視庁殺人課』終了とそれに続いて北大路欣也主演『新宿警察』放送開始に食指が動き、再び契約。
菅原文太が大河『獅子の時代』に『幸福の黄色いハンカチ』にとテレビへ乗り出した同時期の『警視庁殺人課』は、まことに凄まじい番組だ。プロデューサー・勝田康三は『大忠臣蔵』をはじめとする三船プロ時代劇の傑作を多く送り出し、テレビ時代劇史に大きな足跡を残しているが、この刑事ドラマも異色のケッ作(あえてこの表記)である。
文太に鶴田浩二に、初回ゲストは千葉真一(犯人)、梅宮辰夫(捜査一課長!)とまるっきりヤクザ。まァ任侠映画の雄・俊藤浩滋プロデューサーの会社が制作サイドに加わっているから当然といえば当然のキャスティングなのだろうが……うーん、むかしのテレビは凄い。
この「殺人課」ってのは殺人犯を追う部署じゃなくて、人を殺すための部署なんじゃないかってくらいのハード路線だ。最終回はそのサブタイトルも「殺人課全員殉職(PART?/PART?)」……! 種も仕掛けも嘘も偽りもないそのもの潔すぎる題名である。石橋蓮司が初回と最終回を飾るゲストってのもイカシ(イカレ)てるが、とにかく何か間違ったアクションドラマとしてこの上なく正しいモンスター番組として脳髄に刻みつけられた。
池田一朗(=隆慶一郎)とのタッグも多い骨太ドラマの作り手・勝田康三の仕事は、よく掘り起こしてみたいテーマの一つだ。
これと関連してではないが、読書ライフでは隆慶一郎の著作に多く触れた12月でもあった。
再読した『死ぬこととみつけたり』の面白いこと面白いこと! 隆慶描くところの“いくさびと”の貌(かお)は、池田一朗時代の脚本にもしょっちゅう一端を覗かせており、出くわすたび悶絶してシビれてしまう。
最近観たなかでのピカイチを挙げるなら『破れ奉行』第20話「幕府海軍異常あり」の若林豪! 生半可なハードボイルド脚本はこの役者の胸毛の濃さの前に霞んでしまうが、海の男の葛藤と下層の人間の心意気を描いた本作は豪サンの濃さをより引き立たせる一大傑作。これはもう実際に観てシビれまくってほしい。
しかしながら今月の時代劇ライフで一番の比重を占めたのは、何といっても『荒野の素浪人』第2シリーズ再見だった。
単純なマカロニウエスタン調アクションという印象の拭えない第1シリーズに比べ、何と胸にズッシリ響いてくるドラマ性の強さか!
荒唐無稽な娯楽時代劇を多く制作している三船プロ作品の中では異色の硬派さだが、ミフネ御大のテレビにおける仕事中でも最高傑作と言っていいのではあるまいか。
ただしアチシはこれ、中途半端に13話まで出されたきりのDVD−BOXでしか観ることができていない。
さいわいスカパー!の特典で来月はチャンネル二つ無料視聴できることになったので、丁度この『荒野〜』を放送しているテレ朝チャンネルを迷わず選択。間の回が抜けてしまうが、第26〜最終39話は絶対に観るゾ、と今から鼻息荒くしている。
もう一つ選んだチャンネルはホームドラマチャンネル。こちらでは1月、松方弘樹主演の『柳生武芸帳』シリーズ全6作をやるというではないか。ヨロキンも当たり役の柳生但馬守で付き合っている東映らしさ溢れる単発時代劇。テレ朝チャンネルの『ご存知!旗本退屈男』と併せ、三船プロの箸休めとさせてもらうつもり。
ああ楽しみなり。