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「チャンバラ狂時代」のブログ。時代劇のこと、その他映画・テレビドラマやら俳優のことなど。
徒然なるままに、時々思いだしたように更新しています。

松方弘樹の柳生武芸帳のこと、佐藤慶のこと


 スカパー!特典で今月だけ無料視聴させてもらっているホームドラマチャンネルで、松方弘樹主演のテレビスペシャル版柳生武芸帳を観た(第3作「京に渦巻く大陰謀!十兵衛と謎の姫君」)。
 このシリーズ、前の記事で全6作とか書いてしまったが、全5作の勘違いだった。訂正します。

 90年代の単発時代劇といえば、何だか安っぽい印象がしてずっと軽視してきたのだが、レンタルでも中古でもなかなかお目にかかれるものではなかったから、こうして実際に鑑賞できると非常に嬉しい。

 ストーリーは、高仁親王法要の席に、幕府創生期の陰謀の事実を告白せんと老武士が乗り込むところに始まる。その秘密を記した柳生武芸帳「菊の巻」をめぐり、幕府打倒を目指す切れ者の公家と疋田陰流の忍者が暗躍するというもの。
 これは近衛十四郎がやった映画柳生武芸帳 剣豪乱れ雲の焼き直しだ。映画では(役名こそ違うが)十兵衛に挑む若き公家を松方弘樹が演じている。もちろん好敵手ポジションの二枚目だった。ドラマ版は峰岸徹で、もう打って変わったゲスな悪役。
 映画『剣豪乱れ雲』は山形勲演ずるライバル・山田浮月斎の秘剣を十兵衛が無刀取りで破る対決シーンが眼目となっており、シリーズ中でもとりわけ見応えが強い作品に仕上がっていた。

 90年代のテレビドラマでは比すべくもないと言えばそれまでだが、今現在の目から見てしまうとかなり点が甘くなってしまう。
 まだ役者が揃っていた頃だったのだ。何しろ柳生但馬ヨロキンである。敵役は中村嘉葎雄佐藤慶である。ワンシーンだけの大目付若林豪ってのもびっくりだが。
 山田浮月斎もどきの日夏蓮真斎なる怪剣士を演じる中村嘉葎雄は、ド迫力の殺陣で松方十兵衛と斬り結び(ちょっとコマを落としている気がするが)期待通りの存在感を発揮。
 嬉しいのは柳生追い落としを目論んで公家と手を組む老中・土井大炊頭の佐藤慶だ。この人は映画の『柳生武芸帳』シリーズでも何度か同じような役をやっているのである。およそ30年越しの再演という訳だ。

 大島渚映画の常連でもあるインテリ俳優の佐藤慶氏だが、この人、実は大井廣介(広介)著『ちゃんばら藝術史』復刊の際には言い出しっぺの責任編集なんかもしている時代劇好きだったらしい。子供時分にワクワクしながら見ていたチャンバラスターたちと同じ銀幕に登場する身となったことを喜んでいたようなことが、同書のあとがきには書かれていた(と思う。いま手元にないのでうろ覚えである)。
 しかし氏が東映の時代劇に出始めた頃は、既に斜陽期。出演作も『武芸帳』シリーズや『集団奉行所破り』『忍者狩り』などで、今の目から見れば傑作だが、当時では主流を外れた小品という評価だったのではないか。
 やはりスカパー!特典で無料視聴できたテレ朝チャンネルでは北大路欣也主演のテレビスペシャ『ご存知!旗本退屈男を観られる幸運に恵まれたが、佐藤慶氏はここでも大ボスの柳沢吉保を演じていた。東映では進藤英太郎クラスの重鎮がやっていた役である。悪役の花形ポジションである。
 いわば“遅れてきた”悪役世代の氏は、ついに市川右太衛門旗本退屈男シリーズには出演する機会がなかった。
 ちゃんばらフリークの氏は、案外この栄誉を楽しみながらやっていたのかもしれないなァ、と勝手に想像してしまった。