俺は用心棒#1-3

　ホームページ「チャンバラ狂時代」更新は「テレビ時代劇資料庫」北大路欣也主演の単発スペシャル『忠治旅日記』。逸見ファミリーぞろぞろ出演のなか市川右太衛門御大がひとりマイワールド作っているあたりが異色で面白いぞ。

『俺は用心棒』(1967)#1「天を斬る」
原作・脚本：結束信二
監督：河野寿一
出演：栗塚旭、近衛十四郎、市川好郎、仲宗根美樹、吉田義夫、丹羽又三郎、岸正子、刈屋ヒデ子、原田甲子郎、橘ますみ

　奸臣の城代家老（原田甲子郎）を排すべく決起の若侍たち。しかし城代に寝返った男（丹羽又三郎）の密告により叛乱の芽は刈り取られてゆく。侍になることを夢見ていた若党（市川好郎）は、主人を殺されてその敵を討つべく一人立ち向かう……。
　ゆきずりの“用心棒”＝野良犬（栗塚旭）が冷めた台詞を吐きつつ結局のところは手を貸すのだが、結末は哀しい。

　若侍と志を同じくする長者の娘（刈屋ヒデ子）を偶然助けることになるもう一人の“用心棒”として「特別出演」扱いのゲストが近衛十四郎。時期としては『素浪人月影兵庫』全盛の頃であろうか。近衛センセイがのびのびと豪快なチャンバラスターぶりを見せてくれるのが嬉しい。

『俺は用心棒』(1967)#2「剣には小判を」
原作・脚本：結束信二
監督：河野寿一
出演：栗塚旭、岩崎加根子、島田順司、市村昌治、本郷秀雄、岡田英次

　江戸の町にぶらり現れた野良犬（栗塚旭）。小悪党・友吉（市村昌治）の導きで引き合わされた志士・清川八郎（岡田英次）に依頼され、暗殺の仕事をした野良犬は、約束の金を友吉にねこばばされたまま役人に追われる羽目になる。
　転がり込んだ長屋、子持ちの未亡人（岩崎加根子）宅で役人をやり過ごした後迎える朝。借金の取り立てに怒鳴り込んできたのは小悪党・友吉だった。

　図らずも市井の堅気さんに厄介をかけることになった無頼漢が、いわば一宿一飯の恩に報いる格好となりグッと来させるドラマ作りはどこか長谷川伸ふうのものを感じさせる。
　逃げた友吉を追う過程で野良犬と沖田総司＝島田順司の邂逅あり。あの『新選組血風録』そのままの朴訥とした総司の再来である。

『俺は用心棒』(1967)#3「昏い渦巻」
原作・脚本：結束信二
監督：河野寿一
出演：栗塚旭、遠藤辰雄、佐々木愛、成瀬昌彦、木村俊恵、富田浩太郎、橘ますみ

『新選組血風録』ハマリ役の芹沢鴨＝遠藤辰雄が、新選組以前の水戸勤皇党時代で登場、栗塚旭との対峙が『血風録』ファンに嬉しい。
　牢に入れられ島送りを待つばかりの“不逞浪士”野良犬（栗塚旭）は、同房にいた前田十郎（成瀬昌彦）という浪人から見込まれて釈放される。何らかの仕事を野良犬に紹介しようとしていた前田は、しかし水戸勤皇党の志士たちから裏切り者、犬とののしられ斬られてしまう。
　どうやら奉行所与力（富田浩太郎）と繋がりを持ち勤皇浪士狩りに加担していたらしい前田。だが遺児たち（佐々木愛ほか）のいじらしさに打たれた野良犬は、その汚名を雪がんと与力、勤皇志士双方をやり込める手段を講じる──。

　公儀なり勤皇なり看板を背負い高圧的なサムライたちに対し、野良犬はいずれの権力にも属さないただの“用心棒”として動く。その構図がたまらなく痛快だ。