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「チャンバラ狂時代」のブログ。時代劇のこと、その他映画・テレビドラマやら俳優のことなど。
徒然なるままに、時々思いだしたように更新しています。

シン・ゴジラ/新選組血風録#13


 とうとう観てきたシン・ゴジラ(2016年 脚本・総監督:庵野秀明/監督:樋口真嗣)。国内で製作再開ってだけでもファンにとっちゃ感涙モノである。東京の街を焼土と化す破壊神ぶりは'54年版初代を、政治家たちの動きをメインにしたポリティカル・フィクションの面は'84年版を思わせるが、3・11を経た現在版の描き方は'84年版の小林桂樹らが何とも理想で固められた綺麗事としか見えなくなって霞むほど。スーパーXよりもずっと強力であろう今の兵器を以てしても倒せない不条理の塊みたいなゴジラは、ひたすら恐い。
 アチシも時折覗かせて頂いているサイト「資料庫」の管理者・カミコロさんは、

〈・・・橋本忍脚本、森谷司郎監督、岡本喜八監修で「ゴジラ」映画を作ったら、こんな感じになるのだろうか。〉

 とのコメントをされているが、成る程これは的を射た例えだ。テンポの良さとブラックユーモア、重厚にして軽妙な物語の捌き方は喜八カントクのそれを思わせた(ちなみにキーマンの科学者として岡本喜八が写真で出演しているのも注目!)。
 


新選組血風録(1965-66)#13「強襲十津川屋敷」
脚本:結束信二
監督:佐々木康
出演:栗塚旭、島田順司、左右田一平国一太郎、舟橋元
ゲスト:和田一壯、崎田和子、加賀邦男、波田久夫、五十嵐義弘、唐沢民賢

 大和・十津川の郷士は素朴にして熱狂的な勤王思想の持ち主。長州藩の志士らはそれを利用し実働部隊の鉄砲玉に仕立て上げていた。青雲の志を抱き上洛した千葉大輔(和田一壯)もまた、長州の大物・三浦一誠(加賀邦男)に腕を見込まれ、相手の名も素性も知らされぬまま暗殺の実行役に取り立てられる。
 その相手というのが実は元々長州とは同盟関係にあった水戸勤王党の大物。これには長州が既に水戸より強力な同志である薩摩・土佐と手を結んでいる背景があった。
 大輔の抜擢に焦る他の十津川郷士たちは、新選組を斬って手柄を立てようと息巻く。足を痛めた女の荷物を持って宿まで送ってやっていた八番隊隊士・伊藤(有島淳平)がこの犠牲となる。

 長州の動きを察知し歳三(栗塚旭)が手を廻し、暗殺は未然に防がれ十津川郷士らもねじろを叩かれ一網打尽になる。そして伊藤に送られていた女が十津川郷士の身内だったことが分かるのだが、その弟こそ千葉大輔で、水戸の学者に化けて囮となった総司(島田順司)によって返り討ちにされているとは知る由もないのだった。

「十津川郷士は敵かもしれないが……それにしても、今の人は一番つまらない死に方をしましたね」
 検視に来た所司代役人に総司が告げる言葉が胸を打つ。
 冷徹な幹部の加賀邦男、小ずるさたっぷり波田久夫らの好演する長州藩士たちに、いつの時代も変わらぬ世の不条理さが投影されている。何とも苦い幕切れだ。