ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
「チャンバラ狂時代」のブログ。時代劇のこと、その他映画・テレビドラマやら俳優のことなど。
徒然なるままに、時々思いだしたように更新しています。

沈黙の映画評・サイコ野郎はセガールおじさんの方だ『雷神 RAIJIN』

 さて順不同でセガールおじさんのろくでもない映画群を紹介していこうという沈黙の映画評、行き当たりばったり手に取ったものを観ては載せていくとしよう。まず一発目は『雷神 RAIJIN』(2008)である。

 いきなり結論から言ってしまうが、いただけない作品。

 

 セガールおじさんの役どころは、メンフィス市警のジェイコブ・キング刑事。もと特殊部隊とかいった前歴はないが、少年期に双子の弟を殺されたトラウマを持つ。それゆえ異常なまでに犯罪者を憎む性質となっており、過剰なまでに悪党を叩きのめす。ザコ相手でも容赦なく、である。

 って、やっぱいつも通りのセガールおじさんじゃないか。

 目指す敵はシリアルキラーの“グリフター”(マイケル・フィリポウィッチ)及び模倣犯のビリー・ジョー(マーク・コリー)。捜査過程で手がかりとなるチンピラをこてんぱんにやっつけていくジェイコブ刑事。新たな被害者が出ようと、同棲相手の女巡査(カリン・ミシェル・バルツァー)が殺されようと、お構いなし。ただ悪党相手に暴力が振るえればそれでいいのがセガール流。

 ただしあまりにも過剰な暴力の連発に、むしろこのジェイコブ刑事こそ一種のサイコパスなのではないかという逆説的な真実が浮き彫りになっていくのが、セガールおじさん自ら執筆した?脚本の狙い……ではないんだろうけど、ホントそうとしか見えないんだナ。

 

 ちなみにセガール×サイコサスペンスってのはグリマーマン(1996)において既にやった組み合わせで、どう頑張ってもサスペンスタッチにはなりようがなくセガールオンステージの暴力ショーになることは実証済みである。

 しかし本作が圧倒的に「いただけない作品」な理由は、その暴力ショーのお粗末さだ。うるさいまでのカット割りの細かさ、あからさまな吹き替えアクション。時たま申し訳程度に関節技や投げ技が挿入されるものの、基本はブン殴って蹴飛ばす単純な動作の連続で、それもセガール本人の顔を合間に挟んでスタントマンがやるばかり。挙句にスタントマン氏の顔まで映り込んじゃったりしてるんだから、もうどうしようもない。

 

 グリフターが獲物にマーキングして残す占星術のメッセージをジェイコブ刑事が解くやら、FBIから意味もなく女捜査官(ホリー・エリッサ・ディグナード)が派遣されてくるやらの本筋(?)こそが余分なモノでしかなく、ただひたすら暴力刑事が暴れまくる映画なだけに、アクション面がそんな中途半端な代物ではモヤモヤ感が募るばかり。

 おまけに、これは吹き替え不要で太ったセガールおじさん本人が演じられるガンアクションも、異様に命中率が低くモヤモヤする。

 そして全編通じて高まったモヤモヤ感を吹き飛ばすどころか最高潮にまで持っていって終わらせる大蛇足のラストシーン。ぬけぬけと本宅に帰って若い美人妻とイチャイチャするジェイコブ刑事……。セガールおじさんのスケベオヤジぶりが全開になるこのラスト数分は一体何なのであろうか。あ、これこそが主目的だったとか?

 

 残念ながら評価したくともできないのがこの『雷神 RAIJIN』。同じジェフ・E・キング監督による『沈黙の鎮魂歌』(2009)は近作の中ではトップレベルの良作だったのだが、この差は一体どうしたことか。

 頑張って見どころを一つ見つけ出そうとするなら──導入部、模倣犯ビリー・ジョーが生きた女性に仕掛けた時限爆弾を解除するシーンか。

 まさしくこれはセガールおじさんならではの手法で、余人には真似できないウルトラC。それは、

「即座に犯人の居所を突き止め、徹底的に痛めつけて吐かせる」

 という手段。ここが本作最大の山場かつ笑いどころだろう。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

雷神 RAIJIN [ アイザック・ヘイズ ]
価格:1749円(税込、送料無料) (2017/9/20時点)


 

『雷神 RAIJIN』(2008年/加・米)

 原題"KILL SWITCH"=直訳:殺しのスイッチ
 勝手に邦題…『セガールin非情のライセンス

エグゼクティブ・プロデューサー…スティーヴン・セガール、アヴィ・ラーナー、フィリップ・B・ゴールドファイン
プロデューサー…キム・アーノット、リンゼイ・マカダム、カーク・ショウ
脚本…スティーヴン・セガール
監督…ジェフ・E・キング

出演…スティーヴン・セガール(ジェイコブ・キング)、アイザック・ヘイズ(コロナー検視官)、ホリー・エリッサ・ディグナード(癒しキャラのへっぽこ捜査官フランキー・ミラー)、マイケル・フィリポウィッチ(グリフター=ラザラス)、クリス・トーマス・キング(同僚刑事ストーム)、マーク・コリー(一番いい味を出しつつ一番痛めつけられるゲスな悪党ビリー・ジョー)、カリン・ミシェル・バルツァー(セリーヌ巡査)、ウォルコット・E・モーガン(バーで痛めつけられるチンピラ黒人レオン)、ダニエラ・エヴァンジェリスタ(とばっちりを喰う気の毒なバーのねえちゃん)、アンドレア・ステファンキコワ(えせストリップしてジェイコブとイチャつくロシア人妻)、ディヤン・フリストフ・ゲオギエフ(セガールおじさんのスタント)、ニコラス・ハリソン(セガールおじさんのスタントその2)