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「チャンバラ狂時代」のブログ。時代劇のこと、その他映画・テレビドラマやら俳優のことなど。
徒然なるままに、時々思いだしたように更新しています。

沈黙の映画評『沈黙のステルス』淡々とした劣化版ライバックを見よ

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 それにしても、酷い邦題である。

 リリース当時は「セガールに空戦なんざやらせてどうする!」と思ったものだ。それでもつい借りて観た。で、結果、全く印象に残らなかった。2001年の『TICKER』以降、すっかりアクションに力を入れなくなった(そのくせバンバンと新作を撮り続けていた)セガールおじさん、しかも邦題はどれがどれやらサッパリ判らない『沈黙の〜』ばかり。そんな中の一本として、記憶から消え去っていた。

 この「沈黙の映画評」の一環として再見してみたら、中々どうしてそれなりにまとまった映画だった。他のあまりにも酷すぎるセガール作品に比べれば、の話だが!

 しかーし。

 驚くほど盛り上がらないのだ!

 

 セガールおじさんの役は、空軍の凄腕パイロット・ジョン。何やら国家機密を“知りすぎた男”として囚われ、記憶消去の処置を施されそうになっていたがサラッと脱出。盛り上がらぬ映画はツカミからさっぱり盛り上がらぬまま進行していく。

 電磁パルスが機体を包み込み「完全に姿を消す」機能を持った新型ステルス戦闘機・X-77が試験飛行中、消息を絶つ。パイロットのラッチャー(スティーヴ・トゥセイント)がアフガニスタンのテロリストに買収されていたのだ。

 責任者の空軍大将・バーンズ(アンガス・マッキネス)は、町のマーケットで強盗を撃退し警察に拘留されていたジョンにX-77奪還の任務を命じる。

 前半部第二のツカミは、このジョンが強盗をやっつけるアクションシーン。後で警察に「正当防衛」を主張するが、どう見てもわざわざ店外から介入して(ガラスぶち破ってまで)叩きのめしに行っている。チンピラ程度の強盗はきっちり抹殺され、殺されなくても済んだであろう店員まで巻き添えで死ぬ展開は、過剰防衛と言おうか過剰正義とでも名づけるべきか、とにかく暴力が振るえる名目があれば徹底的に振るうといういつものセガール節を踏襲している。

 自身を裏切った格好の軍に再び使われることになるジョンだが、さしたる葛藤もなくサラッとこれを呑み、アフガンへ飛ぶ。相棒として同行し早々敵方の捕虜になるジャニック(マーク・ベイズリー)は台詞上じゃヤな奴みたいに言われているが、このあたりも書き込まれることなくサラッと進行。

 現地にいる協力者・ジェシカ(シエラ・ペイトン)&ロジャー(アルキ・デイヴィッド)と共に淡々と敵を射殺・爆殺。申し訳程度に沈黙の要塞ふう棒術アクションも入るが、これも淡々とこなすのみのセガールおじさん。

 クライマックスは化学兵器が搭載されたX-77を見事に奪回、操縦するジョンとF-16で追ってくるラッチャーとの空戦である。一発でも弾を喰らえば地球壊滅、手に汗握る一触即発の死闘……のはずなのだが、実物戦闘機映像と安っぽいCGの羅列で構成されたスカイアクションもさっぱり盛り上がらないままサラッと決着。

 

 タイムリミットつき、不可能ミッションをギリギリ遂行という王道パターン。これで協力者がプロ戦闘員でない現地の素人とかだったら"Under Siege"シリーズ(沈黙の戦艦』『暴走特急)と同系統なのだが、全編さっぱり起伏なく淡々と流れていくのみである。細川俊之みたいな顔したテロリストの親玉(ヴィンセンツォ・ニコリ)は呆気なくラッチャーに射殺されるし、ミッション成功を告げられた空軍本部の反応もえらくクール(ここは暴走特急クラスの喝采があっていいと思うのだが……)。

 主役のセガールおじさんが『あばれ』シリーズの西郷輝彦並みに淡々としているのはともかくとして、演出はもうちょっとメリハリをつけていいと思うゾ?

 なまじストーリーが小ざっぱりとまとまっているおかげで劣化版ライバックみたいな結果になってしまった本作、観終わったあとに何も残らない。あな恐ろしや、セガールおじさんが冒頭で逃れた記憶消去の処置は、鑑賞者の側に施されてしまったのである!

 

 かろうじて緊張感を持たせていたと思えるシーンは、潜伏したジョンを探しにきた敵方ナンバー2のレズ戦士(カティ・ジョーンズ)にジェシカが色仕掛けで迫るあたり。セガール映画恒例のおっぱいシーンなのであった。

 

沈黙のステルス(2007年2月・米 ビデオスルー作品)
原題"FLIGHT OF FURY" =直訳:怒りの飛行
勝手に邦題沈黙の奪還

エグゼクティブ・プロデューサー:フィリップ・B・ゴールドファイン、ブルーノ・ホーフラー
コ・エグゼクティブ・プロデューサー:ウイリアム・B・スティークリー、ビン・ダン
プロデューサー:スティーヴン・セガール、ピエール・スペングラー
コ・プロデューサー:ヴラド・パウネスク
アソシエイト・プロデューサー:リチャード・ターナー、マイケル・ラヴィッド・ガノット、ジョー・ハルピン
原案:ジョー・ハルピン
脚本:スティーヴン・セガールジョー・ハルピン
監督:ミヒャエル・ケウシュ

出演:スティーヴン・セガール(ジョン)、スティーヴ・トゥセイント(ラッチャー)、アンガス・マッキネス(バーンズ大将)、マーク・ベイズリー(酒が飲める年齢のリック・ジャニック)、シエラ・ペイトン(ジェシカ)、アルキ・デイヴィッド(ロジャー)、ティム・ウッドワード(ベイツじゃないペンデルトン提督)、ヴィンセンツォ・ニコリ(面構えだけは強そうな悪役ボス・ストーン)、カティ・ジョーンズ(おっぱい要員エリアーナ)、ディヤン・フリストフ(セガールおじさんのスタントダブル)、ゲオルゲ・ザルコフ(セガールおじさんのフォトダブル)