時代劇ライフ2017年10月
BS-TBSで武田鉄矢の『水戸黄門』が始まった。もはや里見黄門期からこの番組には何も感じなくなっている。いや遡って観てみると、西村期の途中から既にすっかりこの番組は(というか当時のナショナル劇場は)すっかり空ッポの形骸と化していた気がする。
ただ思うことは、武田鉄矢はどちらかと言えば黄門より大久保彦左衛門でも演ったほうが合ってんじゃないかナってくらいだ。
10月、CS方面での収穫は『獣の剣』(1965年/松竹・俳優座)。これは五社英雄がテレビ『三匹の侍』中から焼き直しで映画にしたものらしい。『三匹〜』は第3シリーズ以前が現存しておらず見較べたくても出来ないのが口惜しい。
テレビシリーズ同様に平幹二朗、加藤剛が出演し、衝突する役どころながら心を通じ合わせる。武家の世界に背を向ける男と、忠義一途に夜叉と化す男。和ませ役の長門勇が不在だがそれに代わるポジションが田中邦衛か? この時期にしては大きい役で邦衛ファンとしては嬉しい。また五社作品に出演は珍しい三原葉子(いかにも五社好みの女優さんって気がするが)も出演。湯けむりのなか平幹と格闘しチラリとバストトップが露出する。
アチシの目的はスタッフクレジットに安部衛氏の名前を確認することだったのだが、色々と拾いものができてオイシい視聴体験だった。衛星劇場は高いけど充分にモトが取れたわい。
クズ映画熱が再燃して『死霊のしたたり3』とかぐちょぐちょぬとぬとホラーなんか観る比率が高まっているなか、それでもセッセとチェックしている時代劇は、主に70年代前半以前のもの。BSジャパンで始まった久保菜穂子・主演『女殺し屋 花笠お竜』は、意外や長門勇演じる赤牛九郎太がアメリカのドラマ『逃亡者』からの戴きっぽく道中劇の主筋をなす。キンブル医師の役どころにあたる長門勇を追っかけるジェラード警部のポジションは何と大木正司。この人もアチシの好きな役者さんだがレギュラー出演って初めてお目にかかる。
『おんな浮世絵 紅之介参る!』はただもう小川真由美という名の小宇宙が広がる魔の珍作。『アイフル大作戦』同様、破壊力抜群の真由美サマ歌唱に恐れ入るしかない。#9「哀しき仕掛人」は兎を愛する孤独な殺し屋・石橋蓮司が出色であった。
飛んで90年代作品、BSフジで毎週金曜にやっているにも関わらずテレビ愛知お昼の枠へも登場、北大路欣也版『銭形平次』は、嬉しいことにスペシャル版まで余さず放送(BSフジのほうだとスペシャルは飛ばしているんだナ)。
この枠、以前同じ北大路平次をやったときは何とエンディングをカット。ゲストキャストもスタッフもクレジットが採れず憤慨したものだった。今回はそんなコトなく安心。
わが愛する三船プロ作品摂取量(?)が不足していることに焦燥感を覚える今日この頃。ちょこちょこと『大江戸捜査網』をチェックして不足を補っているのだが、さすがに長寿シリーズだけあって脚本の焼き直しを散見。そこらへんの事情は『キイハンター』や『Gメン75』でもご同様だが……しかし同シリーズならずとも脚本家はしばしば脚本の再利用を行っている。持ちネタが溜まってきたら、ちょっとしたコラムにまとめてみるのも面白いかもしれない。
- 里見版→松方版(2)への焼き直しを発見! 大江戸捜査網(里見浩太朗版)あらすじ・評 -チャンバラ狂時代
使い廻しチャンピオンを選出するとしたら一体どのライターがトップに躍り出るのだろうか……。今のところ最も目立つ「再利用率」高い作家は国弘威雄センセイかもしれない。