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「チャンバラ狂時代」のブログ。時代劇のこと、その他映画・テレビドラマやら俳優のことなど。
徒然なるままに、時々思いだしたように更新しています。

トリッセンエンタープライズ制作って?

 先日『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』(なんとびっくり製作はC・A・Lじゃないか!)という映画を観て、物凄くムカッ腹が立った。三船敏郎のドキュメンタリーとは嬉しいじゃないか、と期待タップリだったぶん幻滅が尋常でない。

 なんのことはないミフネの旦那をダシにして、手垢のついた「クロサワ監督凄いね」の話を繰り返しているだけの映画ではないか。

黒澤明監督作品の主演スター”としてしかミフネを論じない風潮にはウンザリなのだが、その悪弊は一向に衰えることを知らない。観終わったあとのアチシの顔はプロダクション社長時代のミフネばりに苦虫を噛み潰したようなしかめっ面であった。

 律儀すぎる人柄ゆえに、ひとたび創設してしまった三船プロダクションという大所帯を維持するべく(おそらくは)意にそまなかったであろうテレビ仕事をセッセとこなし、家庭内にもゴタゴタを抱え、悲惨な晩年を迎えたミフネ。その実像を知るのには、ぜひ松田美智子・著『サムライ 評伝三船敏郎(文藝春秋)を一読して欲しい。

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 ところで三船プロダクションに関して、ずっと疑問に思っていたことがあった。

 三船プロの2時間ドラマで制作クレジットが「トリッセンエンタープライズ」になっているものがあり、こりゃ一体どういうことかのう、と気になって仕方がなかったのだ。

 

火曜サスペンス劇場(日本テレビ)『10万分の1の偶然』(1981年12月29日)

ザ・サスペンス(TBS)『殺人刑事が愛した女』(1982年6月12日)

 

 今のところ確認できているのはこの2本。トリッセンエンタープライズというのはおそらくトリッセン・スタジオの別称とみてよさそうで、他にも「装置・トリッセンエンタープライズ」などとなっている作品は散見できる。

 どうして「制作:三船プロダクション」とクレジットされずトリッセンエンタープライズ扱いになっているのか……と気になって気になって仕方なかったのだが、今日の食後、酒をくらい煙草をふかしている最中にフトひらめいた(それほど日常ずっと映画やドラマのことばかり考えておるのじゃ)。

 ヒントになったのは鯖世傘晴サンのブログ「Theブログ☆穴あきおたまでグッドイーブニン」(http://sabajanee.darumasangakoronda.com/)。熱心な東映フリークである鯖世サンは“東映裏被り”をリストアップしておられ、同時に制作クレジットの表記分けなんかにも考察を加えていらっしゃる。

 これだ! 裏被りだァ!!

 当時大江戸捜査網と裏被りしていた土曜ワイド劇場で放送された『吉展ちゃん事件 戦後最大の誘拐』は、三船プロが実質制作していながら協力クレジットも表示されなかった……と思うと、他の「トリッセンエンタープライズ」表記の作品も裏を確認すると説明がつく。

『10万分の1の偶然』の1981年12月29日・火曜夜9時台。裏はテレビ朝日系で『文吾捕物帖』だッ!

『殺人刑事が愛した女』の1982年6月12日・土曜夜9時台。言わずと知れた土ワイの裏で、これはもうテレビ東京系で隠密同心たちが大活躍している時間帯ですわいナ。これなら土ワイもトリッセン扱いでばんばん参加させてくれりゃよかったのに……とは言うても詮なき恨み言。

 

 ついでにもう一つ、1982年12月7日の火サス『交通事故死亡1名』(クレジットは三船プロダクション扱い)もフジテレビ系夜10時台『暁に斬る!』とバッチリ被っているのだが、こちらはヴァンフィル制作・三船プロダクション制作協力の形ゆえか表記を分けることなく堂々と裏でぶつかり合っている。いいのか?

 なんにせよ長年(?)の疑問がこれで氷塊した気がして随分と晴れ晴れした。

 ミフネの……と見せかけてクロサワのドキュメンタリーだった映画でくすぶっていた憂さも幾らか霧消したというものである。

 

 ちなみに『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』だが、見どころも一つあった。それはデビュー間もないミフネがアメ横の放出毛布を下宿でチクチク縫って作ったというコート&ズボン。

 下宿の隣室を世話してやったという岡本喜八監督により語られているエピソードだったが、初めて実物を見ることができた。なんとまァ丁寧に誂えてあることか! 改めてミフネの几帳面な人柄が思い知らされた。