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「チャンバラ狂時代」のブログ。時代劇のこと、その他映画・テレビドラマやら俳優のことなど。
徒然なるままに、時々思いだしたように更新しています。

任侠映画総覧計画『日本暗黒史 情無用』──桜町弘子がイイのである!

 一年半も放置しっぱなしだったのかコレ。ご無沙汰の「任侠映画総覧計画」は、モノホン上がり・安藤昇組長主演作だッ!

 

『日本暗黒史 情無用』(1968年1月/東映京都)

脚本:佐治乾、小野竜之助

監督:工藤栄一

出演:安藤昇、桜町弘子、山城新伍、永山一夫、遠藤辰雄潮健児菅貫太郎、加賀邦男、志摩靖彦、藤岡重慶堀田真三、林彰太郎唐沢民賢、中村錦司佐々木孝丸小池朝雄、安部徹、渡辺文雄

 

 前年(1967)の『日本暗黒史 血の抗争』に続くシリーズ第二作……といっても作品同士の繋がりはない。プログラム・ピクチャーってそんなんばっかりだと判っておる人は判っておられましょうが念のため。

 安藤組長演じるインテリやくざのサクセスストーリー的な内容で、佐治乾による脚本はややドライなタッチで独特な作品世界を現出させる。

 どこかフレンチ・ノワールじみた雰囲気を漂わせるのは、こうしたアクション路線を撮るときの工藤栄一監督ならではといってよい一種持ち味ってモンではないか。

 

 殺人の刑期を終えたやくざ・坂下(安藤昇)が恩顧の親分(安部徹)を頼って訪れるのは、架空の温泉都市“N市”である。暴力団取締りが厳しさを増すなか、親分の娘婿となりN市に根を張った坂下は、旧来とは違ったやり方を提唱し、“脱暴力”のシノギを確保していく。

 といってもタテマエこそ綺麗なことを並べて、実質は結局やくざ。この過度に美化されない主人公像が、他の任侠映画群とは一線を画していて面白い。

 才知に長ける坂下は着実に勢力を大きくしていくのだが、上手をいく者はあるもので……。

 坂下の旧友であり関西の大組織に属する宮本(渡辺文雄)は、協力の手を差し伸べる格好で接近してきて、じわじわとN市利権乗っ取りに動き出すのである。

 興業などスムーズに行うため関西の盃を受けている坂下は、地元を守ろうとしながらも裏切り者扱いされてしまう。警察も関西の絵図面通りに坂下を追い詰めにかかり、まさしく四面楚歌の状況。

 

 生硬な芝居で滅びの美学を体現する安藤昇は、例えば鶴田浩二のような情感たっぷりのヒロイックさとは対極をなす無機質ぶり。

 けれどそれが却ってどん詰まりの悲劇性を強調するかの如しで、フレンチ・ノワール的工藤アクションにはかなりマッチする主役だったかもしれない。

 

 本作が忘れがたい魅力を放つポイントは、意外すぎるところではあるのだが、坂下の女房を演じた桜町弘子の好演。この一点に尽きる。

 時代劇黄金期のお姫様女優。どちらかといえばおきゃんな町娘がハマっていたが、既にこの時期は『博奕打ち 総長賭博』に代表されるようなしっとり系オトナのオンナにシフトしていた。後年テレビ時代劇なんかにゲスト出演してもその線がもっぱらであったよなァ。

 それが本作では活きのイイ鉄火肌の姐さん。登場シーンから“人殺しの前科者”坂下を見て「イカすわァ」などとポーッとしちゃう生粋のやくざ娘なのである。そして結婚してからもキャンキャン言いつつ坂下にベタ惚れで内助の功を発揮、ラストシーンまで寄り添い続ける。

 さながら織田信長夫人・濃姫みたいな烈しい女の役どころは桜町弘子ベストアクトに推したいくらいで、斉藤道三ポジションにあたる安部徹、そして工藤作品では珍しく生きてエンドマークを迎える菅貫太郎と並び印象に刻まれる。