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「チャンバラ狂時代」のブログ。時代劇のこと、その他映画・テレビドラマやら俳優のことなど。
徒然なるままに、時々思いだしたように更新しています。

任侠映画総覧計画番外地『抗争の挽歌』やくざ成分ひかえめ、映画愛てんこ盛り

 およそVシネを観るときに期待感なんてモノは毛ほども抱かないのが常なのだが、いざ観てみると「案外と面白かった!」なんてのがあるから参る。

『破門組』に続いて、助さん退任後Vシネ界に活路を見いだしたものの弟・本宮泰風のパチモンみたいな立ち位置でパッとしない原田龍二主演作を拝見。

 ところがびっくり、期待値ゼロで観たから案外イケた……とかいう次元の話じゃなく、ホントに面白でないのコレ。

 

『抗争の挽歌』(2013年10月リリース作品 72分)
制作協力:アスプロスドラーゴ/制作:メディア・ワークス
製作・発売:コンセプトフィルム/販売:オールインエンタテインメント
製作:及川次雄/企画:山本ほうゆう/営業統括:木山雅仁/プロデューサー:渋谷正一、山本芳久
脚本:浅生マサヒロ、松平章全
監督:浅生マサヒロ
出演:原田龍二、宮本大誠、石堂夏央、Koji、古井榮一、野口雅弘、小沢和義中野英雄

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 敵対勢力・海老名連合のトップをハジこうとして失敗した大阪やくざ・力石会構成員のロク(原田龍二)。刑期を終えて出所してみれば、力石会はすっかり海老名連合の風下に廻っており、若頭・権藤(中野英雄)主導のもとゲスいヤミ金シノギとしている有り様であった。

 男らしい任侠道への理想をくすぶらせつつ、しょせん現実に生きるしかないロク。荒れながらもヤミ金取り立てに精を出すのだが、そんなある日、元カノのチアキ石堂夏央)と再会。チアキはロクと幼馴染みのド甲斐性なし映画狂・サブ(宮本大誠)と結婚していた。

 四十にもなってまだ映画づくりの夢を捨てきれないサブは、ロクが海老名総長を襲撃した武勇伝を映画化するのだと息巻き借金まみれになっているようだ。“取り立て”目的で上京したロクは、いつの間にかダメ男・サブのペースに引きずり込まれ、やはり追っかけてきたチアキともども発破をかける格好に……。

 

 一応やくざモノ。

 しかし中身は映画にかける青春(正しくはおっさんがくすぶらせ続け未だ燃え尽きかねている青春の残滓)ストーリー!

 本宮泰風から凄みを抜いたガス抜けビールみたいな龍二兄ちゃんもなかなかどうして荒ぶっており好演であります。

 が、それより何より宮本大誠のどーしようもない映画狂プー太郎がイイ。救い難いろくでなしなのにロクもチアキもつい手を差し伸べてしまう魔のダメ男ぶりには妙な説得力を持たせる出色の配役だ。

 

 冒頭でカッコよく描かれるロクの襲撃シーン。だがそれは作られた虚像であり、兄貴分・佐伯(小沢和義)が絡む真相が別にあった……との絵解きがなされ、ロクは(定番の流れであるが)裏切り者にオトシマエをつけに行く。

 企画が通っていざ撮影になったサブの映画とロクによる実際のカチコミがカットバックで描かれるクライマックスは、もー素晴らしい高揚感なのである。

 やくざVシネのくせに蒲田行進曲系と言おうか、映画好きの心をくすぐってやまない隠れ名作ここにあり。

 

 キャスティングは当然Vシネお馴染み俳優陣ズラリではあるが、これまたオイシい割りふりが光っているので言及しておきたい。

 卑劣漢や日和っちゃう根性なし親分とかいった役のハマる古井榮一(最近だと『大激突 果てなき抗争』森貞親分なんかがイカしてましたナ)は映画プロデューサー役。サブの持ち込んでくる脚本を読みもせず金だけまきあげております。堅気さん役でもいつも通りの味わい。

 ロクの“親”力石会長には野口雅弘。これまた卑劣漢をやらせりゃピカイチの人だが、ラストがオイシすぎる。特別ゲストみたいな扱いで出ている小沢和義を霞ませるとは。野口雅弘ファン(いるのか?)なら必見ですゾ。