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「チャンバラ狂時代」のブログ。時代劇のこと、その他映画・テレビドラマやら俳優のことなど。
徒然なるままに、時々思いだしたように更新しています。

博徒斬り込み隊


 任侠映画を消化していかなきゃ、などと思いつつ全然果たせないでいる。コツコツ鑑賞していくにはあまりにも量が溜まりすぎている。何もかも。
 いいさ、ノンビリやればと開き直りたいところだが、後から後から録画予約の時間は迫ってハードディスクの容量を空けていかなければならない。

 そんな中で余暇を見つけては、少しずつ色々と観ている自転車操業(?)的な映画ライフ。
 シリーズものを体系的に云々とかいった考えは捨てて、ランダムに思いつきで手に取って観よう、とその第一号に当たった作品は、

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博徒斬り込み隊』(1971年/東映東京)
脚本:石松愛弘佐藤純弥
監督:佐藤純弥
出演:鶴田浩二丹波哲郎室田日出男、工藤明子、渡辺文雄、山本麟一、今井健二、諸角啓二郎、河津清三郎若山富三郎

 任侠映画と呼ぶには、ちょいと違う作品だった!
 しかしこの時期、昭和四十年代後半入りかかった頃の東映東京ってのは、なかなか面白いんである。
 それ以前のギャングものの流れを組むような暴力モノが多く取られ、深作欣二佐藤純弥ら気鋭の若手が大いに気を吐いていた。京都で取られている着流しやくざモノとは一線を画する、背広やくざの物語。
 義理と男伊達の美学を押し出す京都“任侠”映画に大して、東京“暴力団”映画は、時に政略的で時にドライだ。
 とりわけ1971〜72年は暴力団再武装』『博徒外人部隊』『人斬り与太 狂犬三兄弟』といった傑作が集中し、仁義もへったくれもないやくざの世界を画面に叩きつけて、翌73年いよいよ迎える実録路線開幕の土壌を着々と育んでいた感がある。
 そう東映東京育ちの深作欣二が、任侠路線がその灯火を消しかかっている京都に乗り込んで監督した、その名も仁義なき戦いでガラッと流れを変えてしまうまでの過渡期段階が東京で進んでいたのだ。

 71年公開のこの『博徒斬り込み隊』も、やはり一連の過渡期的作品として興味深い。何より面白いのは、ヒロイックな義理の漢が最大のハマり役である鶴田浩二が、相当ダーティなのである。
 鶴田浩二演じる相羽が、おつとめを終えて出所してみたら母体の組は解散しており、敵だった巨大勢力がのさばるばかり。慕ってきたチンピラ(小林稔)の死をきっかけに赴いた東北で、愚連隊に毛の生えたような一家へ客分としておさまるのだが、ここにも巨大勢力の手は延びてくる。
 おまけにその敵対勢力一家へ接触。暴力団根絶を目論む警察はこれを好機とばかり、敢えて火が立つのを待つ……。

 こんな構図の中、相羽は人手を利用して個人の報復を進めるような立ち回りを見せる。草鞋を脱いだ一家の親分・山本麟一がいちばん損な役回りである。
 そして相羽はいつでも窮地に他人の死を代償に助かる。本人の作為ではないようでもあり、計算づくのようでもある。いや、全体として見るとかなり計略家なのだ。
 いつもだったら鶴田浩二のラブシーン相手がお決まりの工藤明子も、今回に限っては相羽に憎しみをぶつける他者である。「ひとごろし」呼ばわりをした直後に、これまた銃撃の巻き添えを喰って絶命する。

 とにかく珍しい鶴田浩二を見た、という思いでいっぱいだ。むろんドライすぎる奴ではない。そもそもの動機には組への義理というものがあろうし、山本麟一親分への義理も相当に立てている。不浄デカの若山富三郎とのやりとりも、腐れ縁からなる友情じみたところまで行く。
 が、やっぱ本作の鶴田浩二は、めちゃんこイケ好かない奴だと断言できる。こんなイケ好かない鶴田浩二が発現したのもまた、他ならぬ“過渡期的作品”だからこそだ。

 究極的なドライさ、計算高さ、悪賢さの面を一手に引き受けているのは丹波哲郎演じる榊警視正。このあたりの反権力カラーなんかも実に東映東京らしさを感じさせると言おうか……。
 ちなみに大がつく程の丹波哲郎ファンという立場から本作の感想を述べるなら、迷わず

「最高」

 と言う。
 ラストシーン、文句なし!