啞侍 鬼一法眼#1-2
『啞侍 鬼一法眼』(1973-74)
出演:若山富三郎、勝新太郎、瞳順子、レイ・ロイド
#1(サブタイトルなし)
脚本:高橋二三
監督:勝新太郎
ゲスト:ジュディ・オング、天本英世、須賀不二男、藤岡重慶、寺島雄作、長谷川弘、北村英三、伴勇太郎
#2「くちなしの子守唄」
脚本:高岩肇
監督:安田公義
ゲスト:太地喜和子、富川晶宏、岸田森、杉山昌三九、守田学哉、梅津栄、市川男女之助、田島義文、浜田雄史
夜は早く寝て朝早く起きるほうが好きな性質なのだが、時代劇専門チャンネルときたら夜の11時からとんでもないものをやってくれているので、なかなか理想はままならない。
さすがに番組表の上では「啞侍」のワードが削られているが、よくぞやってくれたという怪作、若山富三郎・主演『啞侍 鬼一法眼』である。
CSでもまず放送されることはないだろうから、海外版のDVDボックスを買わないとお目にかかれないだろうナと覚悟を決めていた作品だっただけに、感激もひとしお。絶対に録り逃すまいと気合を入れている。
という訳で、ホームページの「テレビ時代劇資料庫」にさっそく#1-2のキャスト・スタッフデータをアップした。即時性乏しき弊サイトとしては異例のスピード更新だ!
ヨロキンに当たり役・拝一刀を奪われお冠の若富先生を鎮めるべく用意されたという番組、いきなり弟による才気走った演出が炸裂する初回は、復讐鬼たる鬼一法眼の経歴をさらっと説明(ナレーションはムツゴロウさんこと睦五郎だッ)して本筋に入っていく。
ちなみに賞金稼ぎたる鬼一法眼の仕事ぶりを見せる導入部、兇悪なご面相の賞金首が文字通り首ちょんぱされているが、スキンヘッドをトレードマークとする伴勇太郎が原型留めぬメーキャップを施されており必見である。
父母を殺し許嫁を犯し、自身の喉を斬り裂き声を奪った仇敵・ゴンザレス(レイ・ロイド)を探し求める鬼一法眼は、南蛮寺の祈祷師(天本英世)を刺客から救い、用心棒に雇われる。ところがこの祈祷師、長崎の顔役たちを牛耳る元締め格だった。
南蛮寺で働く健気な娘・お菊(ジュディ・オング)ともども鬼一法眼を利用し江戸まで阿片の運び屋に仕立てようとする奸計のため、お菊の祖父(寺島雄作)は首吊りを装って殺され、骨壷に隠された阿片は祈祷師の上前をハネんとする顔役連中の差し向けた刺客に狙われる。
例によってどのシーンも演者が話の筋を知らされてないんじゃないかってな、つくりものドラマとしては異質とも思える芝居が随所に見られるカツシン演出は、画面から目が話せない緊張感を孕んでいる。
その緊張感のなか少しも動じていない風で抜群の殺陣を見せるお兄ちゃんを前にしては、意味ありげにウロチョロする“卍”カツシンもカタなしだなァ。
そんな異様な歯応えのある初回を前にすると、旧大映のベテラン・安田公義がメガホンをとった#2はいかにもオーソドックスな印象は否めない。太地喜和子や岸田森もカツシン演出のなかで見たかった気がするが……。
ひと仕事終えて稼いだ品川の宿で人殺しに行き遭う鬼一法眼。遺された幼い三吉少年(ワカトミ一刀と映画で組んだ大五郎・富川晶宏である!)に父の死を知らせまいとする優しいおじちゃんぶりがイカした若富先生だが、あくまで目的は仇敵探し。“卍”が何やら探っているらしい異人屋敷にゴンザレスという異人が逗留していると知って乗り込む啞侍には、品川奉行所のお偉いさん(これも旧大映人脈の杉山昌三九……まだこの頃も活動していたのだなァ)が差配する悪事なんか知ったこっちゃァない。
ただし三吉坊やとその父殺しの下手人を憎むご近所の姉ちゃん・おさよ(太地喜和子)に火の粉が振りかかったときには怒りの剛剣一閃、悪党一味はバタバタとなぎ倒されるのである。
刀を渡せと迫られる場では初回と同様に鞘の仕込み短剣がモノを言う。編笠のバックミラーといい奇天烈なギミックはやはり劇画原作。